「HSPは社会人として働いていけないの?」
「繊細すぎて仕事が長続きしない」
「休職中だけど、復職は耐えられなさそう。どうしたら?」
自身の気質により、働くことに難を感じているHSPは多いのではないでしょうか。
なかには、現在休職をしているけど、今後の復職や働き方に悩んでいるという方もいるかもしれませんね。
今回の記事では、HSPで働くことにツラさを抱える方に向け、以下の4つをご紹介します。
- HSPが仕事で苦労しやすいポイント
- 働くのがツラいときにとれる選択肢
- 休職のための3ステップ
- HSPが長く幸せに働き続けるためのポイント
HSPの気質を持ちながら働くのは、ときにとてもツラいことも。
しかし、気質との向き合い方を知ることで働き方が楽になるヒントがきっと見えてくるはずです。
ぜひあなたに合った働き方を探すきっかけにしてみてください。
HSP気質と休職の関係とは?
働き方についての対処法をお伝えする前に、まずはHSPの気質について振り返りましょう。
HSPとは、
「Highly Sensitive Person(ハイリー・センシティブ・パーソン)」
の頭文字をとったもの。
生まれつき感受性が強く、敏感な人のことを指します。
アメリカの心理学者であるエレイン・アーロン博士により提唱され、全人口の5人に1人がHSPといわれています。
- 会社の同僚や上司の言動や感情に振り回される
- 人の物音や光・匂いなど、さまざまな刺激を敏感に感じ取る
- 自分でなくても人が怒られているとツラくなる
このように、HSPは働く中でストレスを感じる場面が多くあり、疲れやすい特徴があります。
またアーロン博士は、HSPは
D:思慮深い、深く考えてから行動する(Depth of processing)
O:刺激に敏感で疲れやすい(Overstimulated)
E:人の気持ちに振り回されやすく共感力が高い(Emotionally reactiv and Empathy)
S:鋭い感覚をもち些細なことにも気づく(Sensitivity to Subtleties)
の4つの気質にあてはまる人と定義しました。
4つの気質は頭文字をとって「DOSE(ダズ)」とも呼ばれています。
これらの気質はHSPの長所ですが悪い方向に働くと、メンタル疾患や休職につながる原因になることも。
休職の原因として考えられるものは?
働く中で
「自分は周囲のように働けないのかな…?」
と心配になるHSPはたくさんいます。
たしかに、HSPの繊細さは働きにくさや休職につながりやすいことも。
しかし、どのようなところにつまずきやすいかを知ることで対策も打ちやすくなります。
HSPの気質が休職の原因となりやすいのには、大きく3つの原因が考えられます。
仕事での人間関係に疲れやすい
HSPの気質のひとつである、感受性や共感性。
これらは、職場の人間関係で疲弊する原因になりやすいものです。
特に、会社はチームで動くことが多いため、周囲に気を使いすぎたり、人とのやりとりが刺激となって仕事に集中しづらくなるHSPは多くいます。
会社での人間関係で疲れや落ち込みなどの症状をよく感じるという方は、HSPの気質が作用しているのかもしれません。
重圧・ストレスに弱い
感受性が強く、深く考えてしまうHSPは、周囲からの期待や責任に対して過剰にプレッシャーを感じがちです。
HSPの思慮深さは、ときに
「できなかったらどうしよう?」
といった不安につながります。
重要な発表の前に不安なことばかり考え、おなかがいたくなった経験がある方もいるのではないでしょうか?同様に、過度にストレスを感じると心身を崩す原因となることも。
特に深く考える傾向にあるHSPであればプレッシャーに押しつぶされやすい側面があることはたしかです。
マルチタスクは刺激過多で混乱しやすい
一つひとつのことに対しあらゆる可能性を考えてしまうHSPにとって、マルチタスクは頭が混乱しキャパオーバーになることも。
「いま話しかけても大丈夫かな?」
「質問する前に、事前に資料に書いていなかったか確認しよう」
「いまこの人は忙しいだろうから、話しかけるのは10分後にしよう」
考えることが多くなればなるほど、配慮することも増えていきます。
並行してさまざまなことをこなすマルチタスクは、HSPにとっては刺激過多となりやすく、疲弊の原因にもなってしまいます。
HSPで働くのがツラいと思ったときの選択肢
この記事を読んでいる方の中には、今まさに働くのがツラいと感じている方もいるのではないでしょうか。
「働くのがツラい」
と感じている気持ちを無視して働き続けると、心身の状態を崩すことにもなりかねません。
選べる選択肢はいくつかあるので、あなたができそうなことをぜひ試してみてください。
信頼できる人や専門医に相談する
自分の努力や対処では事態は改善できない、と感じた際には、専門医へ受診の検討をしましょう。
受診にためらいがある場合には、以下の4つの指標を受診する判断基準にしてもいいかもしれません。
① 自分で対策を続けたけど、生きづらいと感じる
② 社会生活で、対人関係がうまくいかないと感じる
③ 最近、気持ちの落ちこみや不安が強まったように思う
④ 落ち込みとともに、身体の不調も起きている
もしメンタル疾患だった場合、そのままの状態で働き続けることは症状の悪化の原因となります。
気になる場合は早めの受診のほか、臨床心理士など専門家によるカウンセリングをおすすめします。
有給や休職制度を利用して心身をきちんと休める
有給休暇の取得や休職制度が利用できる場合には、活用し休養することを検討しましょう。
なかには休職となると、給与がなくなるため金銭面が心配という方もいるかもしれません。しかし、条件を満たしていれば以下の制度を活用し手当金を受け取ることもできます。
①傷病手当金制度
加入している健康保険から、給料のおよそ2/3の程度の金額を受け取ることができます。
受け取るためにはいくつか条件があります。
・ けがや病気で働けない状態
・連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかった
・ 休職中は会社から給料が支払われていない
手当金を受けとる場合は、健康保険の担当窓口に問い合わせし、書類を取り寄せましょう。
申請には自分で記載する書類のほか、主治医や会社の担当が記入する書類も必要になります。あわせて相談してみてください。
②自立支援医療制度
心の不調で継続して通院が必要な場合に使用できる制度です。
精神科や心療内科の受診にかかる医療費を、3割負担のところ1割に抑えることができます。
専門医の診断書が必要になるので、申請をしたい場合はまず主治医に相談しましょう。
「もう働くのは無理かも…」と感じたら退職も選択肢に!
療養し専門医に相談した結果「働くのは難しいかも…」と感じた場合には、思い切って退職も視野にいれましょう。
元の職場に戻っても、同じことを繰り返してしまうのでは本末転倒。
あなた自身が今の会社で働いていくビジョンが見えないのであれば、新しい職場を探すことも一つの手です。とても言い出せないという場合には、退職代行サービスなどを利用すれば、会社とのやりとりなく退職もできます。
「退職するのはちょっと…」
と思ったら、会社の中で働く環境を変えられないかとを考えてみてもいいかもしれません。
たとえば、部署の移動や在宅ワークへの切り替えができれば、働きやすさはまったく変わってきます。
HSPの休職のための3ステップ
休職したいけれど、具体的にどういう手順を踏めばいいのだろうとお悩みのHSPもいるかもしれません。
休職のためには、3つのステップが必要になります。
STEP1:HSPで関連する症状で相談
HSPは生まれもった気質であり病気ではありません。そのため、HSPに関連する症状で専門医や、社内の産業医に相談をしましょう。
HSP自体は病気ではありませんが、HSPの気質から精神疾患につながる可能性はあります。たとえば、適応障害や不安障害などはHSPの気質から発展しやすい病気といわれています。
主治医には、HSPの気質についても正直に話してみましょう。
STEP2:休職するための診断書をもらう
休職のためには、多くの場合主治医からの診断書が必要になります。
休職をするかどうかの判断は最終的には主治医がします。そのため、休職をしたい場合は、休職をしたいと思っている旨をはっきりと伝えることが大切です。口頭で伝えられそうにない場合は、事前に紙にまとめたものを渡すなどしてもよいでしょう。
主治医の考えや経験によって、判断が異なる場合もあるため、もし専門医から診断書を出してもらえない場合は、複数の病院で相談するのもひとつの手です。
STEP3:会社に提出し、休職に入る
休職のための診断書と申請書を準備したら、会社の人事や上司に提出しましょう。
休職に入る際、休職はいつからいつまでを予定しているのかなどは事前に伝えておく必要があります。
また、休職中は療養に専念できるよう、できれば休職前に最低限の引継ぎは済ませておくと安心です。もしも引継ぎがおろそかな状態で休職に入ってしまうと、休職中に仕事の確認などが入り療養に集中できなくなる可能性もあります。
書類の提出後は、主治医の指示に従い療養に専念できるよう環境を整えましょう。
HSPが仕事を長く続けるためのポイントとは?
「HSPは気質のために長く働けないんじゃないか…」
と悩んでいるHSPは多くいます。
たしかに、HSPの気質は働く上でネックとなることも少なくありません。しかし、HSPであったとしても働きやすい方向へむかうためにできることはたくさんあります。
①HSPである自分を受け入れること
HSPは無理に治そうとはせず、受け入れることが大切です。
そのためにも次のことをよく理解しておきましょう。
- HSPは生まれながらの気質で、病気ではない
- 繊細さを長所として活かすことを考える
- 疲れやすさも、「気質だから仕方ない」と捉える
たとえば、刺激への疲れやすさや人に振り回されるなどの弱点は、環境調整や休養を取り入れることでカバーできます。
疲れを軽減できれば、HSPの本来の強みである共感力や、深く考えられる点などの強みを活かしやすくなるはずです。
➁HSPの特性を理解し人に伝えるようにする
信頼できる人には、自身の気質を率直に伝えることも大切です。
HSPの中には、自身の生きづらさを周囲から理解されなかった経験がある方も多くいます。
そのような経験から、自分の特性を隠して抱えこんでしまう人も少なくありません。しかしそれは、HSPの方の生きづらさや孤独感を強めてしまうことにもなりえます。
HSPの理解者が周りにいなければ、HSPを理解できるコミュニティに自ら関わっていくこともおすすめです。
また、非HSPの中にも、HSPに対してどう関わっていけばよいだろうと悩んでいる方もいます。「理解したい」と思ってくれる人に対しては自己開示することで、すこしずつ孤独感も和らいでいくはずです。
③環境を調整して刺激を減らす
HSPは刺激過多になると、クタクタに疲れてしまいます。
無意識のうちに大量の刺激を受け取ってしまうHSPにとって、刺激を減らせるような環境に調整することも大切です。
人が扉をバタバタと閉める音やガヤガヤとした話し声がつらいと感じたり、怒っている上司や同僚の姿が目に入り、心情的につらいと感じたり…。
人によって「嫌だな」と感じる刺激は様々です。
たとえばこのような刺激に関しては、
- イヤホンや耳栓をしたり、静かな場所へ移動する
- サングラスやブルーライトカットメガネなど色の濃いメガネをかける
このような対策を打てるかもしれません。
自分の中でどういった刺激をツラいと感じるのかを見極め、できる範囲で苦手な刺激を減らす工夫をしていきましょう。
④人との距離感に気を付ける
HSPは、意識的に人との距離をとるようにしましょう。
HSPの共感力はとても大きな長所ですが、関わる人から影響を受けすぎてしまったり、疲弊の原因になることも少なくありません。
物理的に離れるのが難しい場合は、本やパソコンなど人との間に物を置くのもおすすめ。
境界線を引くことで心の距離を保ちやすくなり、心理的な動揺を軽減できます。
⑤自分にとっての疲労サインを知る
刺激過多になりやすいHSPは、自分にとっての疲労サインを知ることも大切です。
共感性が強いHSPは、自身が刺激過多となった場合でも
「周囲に合わせなくては!」
と無理しがちです。
そのため自分自身の「無理しているサイン」を知ることで、意識的に自分にストップをかけることもできるようになります。
頭痛がしたり、寝すぎてしまう、など人によって疲労のサインは様々なので、自分自身のサインを見つけ、指標として持っておくと安心ですね。
⑥リラックスと休養の方法を知る
HSPは、自分にとってリラックスできる方法と休養の方法を把握しておきましょう。
刺激を捉えやすいHSPは、実は常に緊張状態なこともしばしば。
一日中、気持ちも体も休まらない状態で過ごしていては疲れてしまいます。
緊張しやすく疲れやすいことを意識し、意識的にリラックスや休養の時間を取り入れることが大切です。
たとえば、以下のようなものをとりいれてみてはいかがでしょうか。
- 落ち着く匂いの香水・アロマを持っておく
- 特定の曜日は「一人でのんびりする日」と決め、予定はいれない
- テレビやSNSを見ない時間を決める
リラックス方法は人によって様々なので、いろいろな方法を試しながらご自身に合うものをいくつか持っておくと安心です。
⑦考えすぎない練習をする
深く物事を考えてしまいがちなHSPは、あまり考えすぎないように工夫・練習をすることも大切です。
HSPの深く考えるところは長所でもありますが、注力する点によってはひどく疲弊してしまう原因になります。
たとえば、自分では解決できないことをグルグルと考え、ネガティブになってしまうことはないでしょうか。このような反芻思考は疲れのもととなります。そのような場合、まず考えすぎている自分に気づきましょう。そして、自分で解決できることでなければ頭から切り離すことが大切です。
HSPは無意識のうちに考えていることがたくさんあります。考えすぎな自分に気づいたら、意識を他のことにそらしたり、切り替える練習をすることで考え疲れを減らすことができてきます。
HSPが自分に合う仕事を見つけるには?
HSPが自分に合う仕事をするには、自身の弱みをカバーでき、強みを活かせる仕事につくことが大切です。
今回は2つの方法をご紹介します。
苦手なものが少なく長所を活かせる働き方を選ぶ
HSPは、敏感なことが強みでもあり弱みでもあります。
そのため、ご自身にとって苦手なものや疲れの原因となるものが少なく、かつ気質を活かせる働き方を選ぶことが大切です。
たとえば、共感性の強いHSPは、ギスギスした人間関係の職場や常にプレッシャーのかかる仕事だと刺激が多くなりすぎて疲れてしまいます。
逆に、一人で静かに集中できる環境や、自分の裁量で進めていける仕事であれば、本来の繊細さを活かした仕事ができるのではないでしょうか。
自分にとって疲れにくく、やりやすい仕事・働き方を選ぶことで長所を活かしやすくなるはずです。
HSPに向いている仕事をさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
>> HSPに向いている仕事・向いていない仕事は?特徴や選び方を解説【適職探し】
転職エージェントなどに相談し自分に合った職場を見つける
転職エージェントなどの専門機関を活用し、気質に合った職場を見つけることもひとつの手段です。
自己分析をすることは一人では難しい場合もありますよね。そんなときは、第三者と相談しながら自分に合ったものをみつけていくのも大切です。
また、新たな環境に入るときはだれしも不安になるもの。そんなときに伴走してくれるサポーターがいれば、転職の不安も軽減するはずです。
まとめ
繊細さや敏感さから、働き方に悩みやすいHSP。
心身を壊さず働くためにも、HSPの特性を理解して受け入れることがなにより大切です。
HSPの敏感さは短所ともなりえますが、短所をカバーし長所を活かすことでイキイキと働くことも十分可能です。
もしも休職を考えるほど疲弊している方は、まずは専門医や産業医に相談し、ゆっくりと療養することを検討してください。
HSPの中には、がんばりすぎて心身を壊してしまう方がたくさんいます。今後の働き方を考えるにも、しっかりと心身を整えてから考えたほうが方向性も定まりやすくなりますよ。
HSPの気質をはじめ、あなたがありのままの自分を受け入れることで、休職せずに働ける方法もみえてくるはずです。ひとつずつでいいので、できることから始めてみましょう!