「HSPは仕事を長く続けられない?」
「HSPと不安障害(不安症)ってどう違うの?」
「不安になったり焦ったりしてしまう。そういうときにできることはある?」
HSPの人のなかには、このような悩みを抱えている人もいるのではないでしょうか。
今回の記事では、日常生活の中で不安や悩みを抱えやすいHSPの方に向けて、以下の4つをご紹介します。
- HSPと不安障害の違い
- HSPで不安が高まりやすい理由
- 不安でたまらないときにとるべき3ステップ
- HSPが不安なく長く働き続けるためにできる対策
HSPも不安障害も、その特徴への理解を深めることで心配や不安が軽減したり、対処法を考えやすくなります。
ぜひ、この記事を最後まで読んでみてくださいね!
そもそも不安障害(不安症)とは?
不安障害(不安症)とは、強い不安や緊張により、生活に影響がでてしまうような状態です。
たとえば、人と話すことや、人が多くいる場所に行くことが極端に怖くなったり、苦痛を感じたりする状態をさします。
一般的に、半年以上このような症状に襲われる場合に不安障害(不安症)と診断されます。
実はこの機能は、本来自分自身に警戒を促すために誰にでも備わっているものですが、不安障害(不安症)は、それが過剰になってしまうこと。
たとえば、もともと気質的に神経質だったり不安を感じやすかったりする人は、さまざまな場面でストレスを感じやすく、それが何らかのきっかけで過剰に現れるようになります。
不安障害(不安症)の原因
不安障害(不安症)の原因には「遺伝的な要因」と「環境的な要因」が関係すると言われていますが、まだよくわかっていません。
敏感さや気を使いすぎるなどの遺伝的な要素に加え、過去の出来事に対するさまざまな苦手意識やトラウマなどが複雑に関わっているケースもあるでしょう。
たとえば、以下は環境面で原因となりやすいシチュエーションです。
- 人から注目を浴びる
- 苦手な人と接する
- 上司の前で電話で話す
- 親しくない人と食事をする
このような場面では、誰しも多かれ少なかれ緊張します。
しかし不安障害の人の場合は、過度に緊張や不安が高まりやすいのです。
不安障害(不安症)の分類
不安障害(不安症)は、大きく3つに分類されます。
- 全般性不安障害
- 社会不安障害
- 恐怖症
「全般性不安障害」とは、さまざまな状況で不安が強くなり症状があらわれるもの。頭痛や疲れやすいなど日常生活に支障をきたします。
「社会不安障害」とは、人前での会話など注目が集まるような状況下で、極度の不安や緊張を感じてパニックになる症状。人前で仕事をしたり、発表したりなど、普通の人であれば特に問題ない場面でも、強く不安を感じてしまうのです。
「恐怖症」とは、高所恐怖症・閉所恐怖症・先端恐怖症など目の前に存在するものに対して症状がでるもの。ほかにも心的外傷後ストレス障害(PTSD)や強迫性障害などもそれにあたります。
不安障害(不安症)の症状
不安障害(不安症)は以下のような症状があらわれます。
【体の症状】
- 動悸がする
- 手足が震える
- 頭痛・頭の圧迫感
- 緊張感・しびれ感
- めまい、息切れ など
【心の症状】
- パニックになる
- 頭が真っ白になり言葉がでなくなる
- そわそわ・イライラして落ち着かない
- 常に緊張感いっぱいでリラックスできない
- 些細なことが気になり、余計な心配をする
このような症状がでると自分自身を「ダメな人間だ」「恥ずかしい」と思ってしまう人も多いもの。
このような経験が強いトラウマとなり、似た場面を過度に避けるために行動が大きく制限される要因にもなってしまいます。
HSP気質と不安障害(不安症)の関係とは?│違いと類似点
HSPには、生まれもった「DOES(ダズ)」という4つの気質があります。
- 情報を深く考えて処理する(Depth of processing)
- 過剰に刺激を受けやすい(Overstimulated)
- 感情の反応が全体的に強く、共感力が特に高い(Emotionally reactiv and Empathy)
- わずかな刺激にも気づく(Sensitivity to Subtleties)
>>【徹底解説】HSPとは?特徴・診断方法・発達障害との違いなど【繊細なあなたへ】
このような特徴を持つHSPは、不安や心配に襲われやすい傾向にあります。そのため、不安障害などの二次的な疾患となりやすいのは、否定はできません。
しかし、HSPは不安障害とは根本的には異なる概念のもの。
次からは、違いと類似点について詳しく見てみましょう。
HSPと不安障害(不安症)の違い
HSPと不安障害(不安症)の特徴は似ている部分も多くありますが、もともとの概念は異なります。
HSPは、心理学者のエレイン・アーロン博士が提唱した概念で「ハイリ―・センシティブ・パーソン」の略称です。生まれつき繊細な気質を持ち、刺激に人一倍敏感な人をさします。HSPの気質は生まれつきのものであるため、治療するというよりも気質の理解を深め「生きづらさ」への対処法を知ることが大切になります。
一方、不安障害(不安症)は精神医学上の定義です。
不安障害(不安症)の場合は、HSPとは異なり抗うつ薬や漢方薬など、薬での治療を行うこともあります。一般的には、緊張や不安を緩和する対策を身につけることも並行して行います。
HSPと不安障害(不安症)の類似点
HSPと不安障害(不安症)は似ているところもあります。たとえば、以下のような特徴は、HSPにも不安障害の方にもあてはまります。
- 刺激への敏感さ
- ものごとを深く考えすぎる
- 人に気を使いすぎる
- 周りに影響されやすい
HSPと不安障害(不安症)の人は、さまざまな場面で緊張状態が続きやすい傾向にあり、リラックスできない状態で心も体もぐったりと疲れやすいところが類似しています。
そのために混同されやすいのかもしれません。
HSPが不安になりやすい原因とは?
ここでは、HSPが不安になりやすい原因について3つご紹介します。
①HSPは少数派で周囲に理解されづらい
HSPは、およそ5人に1人の割合で存在していると言われています。どうしても少数派になり、理解されにくいことが不安になりやすい原因といえるでしょう。
HSPは、非HSPにとって少しの刺激となる出来事であっても過度に不安が高まり、疲れ切ってしまいます。
たとえば、苦手な上司と対峙するときは多くの人が緊張しますが、HSPは非HSPよりもたくさんの刺激を受け取り疲れ切ってしまいやすいのです。
しかし、他の人にはなかなか理解されず「誰でも疲れるのに大げさに言っている」と思われがちなのも、HSPの人にはよくあることです。
このような経験が重なるうちに、周囲に理解されない不安に襲われるHSPの方は多いのではないでしょうか。
②繊細で共感性が高く人間関係に疲れやすい
HSPは、高い共感性を持つがゆえに、人の思惑などを無意識に感じ取ってしまい、人間関係に疲弊しがちです。
他人の感情を敏感に察知するHSPは、人間関係においても先回りの配慮に長けます。
しかし、それは裏を返すと過剰適応につながることも。過剰適応とは周囲に合わせすぎる状況のことで「このように振る舞うべき」などの強迫観念に襲われやすくなります。
このような経験が続くと、人間関係で不信感を募らせたり、相手の本心がわからず不安に陥ってしまうのです。
③五感が鋭く、物音や目に入るものを敏感に察知しやすい
HSPは、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚が鋭く、環境や周囲の変化に気づきやすい傾向にあります。そのために、小さな変化でも違和感を抱き、混乱したり驚いたりしてしまうことも。
たとえば、HSPの方のなかには以下のようなものが気になるという人もいるのではないでしょうか。
- 同僚や上司の機嫌がわるいこと
- いつもと違う匂い
- 周囲の物音や話し声
- カフェインなどの添加物
変化や刺激に敏感に気づけることはHSPの長所です。
しかし、その敏感さゆえに他の人よりも激しく動揺したり、周りの影響に左右されて不安になりやすい傾向にあるのです。
HSPが不安に対処するためのポイントとは?
HSP特有の気質が影響し、HSPは不安障害などの精神疾患になりやすい傾向にあります。
ここでは、HSPが不安に対処する方法を8つご紹介します。不安に対処するポイントを押さえることで、生きづらさを軽減し、精神疾患にかかるリスクも減らすことができるでしょう。
ぜひできそうなものから試してみてくださいね。
①HSPの特性を理解する
まずは、HSPの特性を自分自身が理解することが大切です。どのような面で不安になりやすいかがわかれば、対策も立てやすくなるからです。
HSPには「DOES(ダズ)」に代表されるさまざまな特徴があります。
- 細やかなことによく気づく
- 共感力が高い
- 物事を深く考える
- 刺激に敏感
こような特徴をネガティブに感じてしまうことも少なくありません。
しかし、活かし方によっては大きな長所にもなるのです。
まずは、HSPの特性を理解し、特性を強みとして発揮できるようにしていきましょう。
➁考えすぎない練習をする
HSPは、思慮深い傾向があります。
しかし、考えすぎない練習も大切です。考えすぎることは、不安や心配を増幅させたり、動けなくなってしまうからです。
具体的には、以下のようなことを試してみてください。
- 考えすぎになっている自分に気づくこと
- 別のことに集中すること
客観的に自分を見つめることが大切です。無意味に考えすぎることを減らせば、本来考えるべきことに集中しやすくなるでしょう。
➂物事のプラス面に目をむける
HSPは物事のネガティブな面に目がいきがちですが、ぜひプラスの面にも注目してみましょう。
たとえば、HSPの気質についても以下のように言い換えができるのではないでしょうか。
- 繊細すぎる → 感受性が豊か
- 周囲に合わせてしまう → 協調性がある
- 敏感すぎる → さまざまなことにすぐ気づく
- 疲れやすい → 情報をしっかり受け止めている
物事を別の視点で捉えることを「リフレーミング」と言います。捉え方を少し変えだけで、HSPの短所は長所にもなることがわかるのではないでしょうか。
④環境を調整する
HSPは、周囲の情報をよくもわるくも受け取ってしまう性質があります。そのため自分にとって居心地のよい環境をつくることは大切です。
たとえば、わたしたちは日々職場で仕事をしたり、通勤したり、部屋でゆったりしたり、買い物をしたりして過ごしています。
このような環境の中で、あなたにとってどういったことが刺激になり疲弊しやすいかをしっかり把握しておくのです。自分にとって刺激となる原因が何なのかわかれば、できる限りそれを減らしていきましょう。
疲れすぎを回避し心地よい生活を組み立てていけるようになるでしょう。
⑤相手との距離を確保する
HSPは、できるだけ相手との距離を確保するように努めましょう。感受性が高く人に共感してしまいやすいHSPは、緊張しやすく疲れやすい傾向にあるからです。
物理的には、連絡は電話ではなくオンラインやチャットで行うようにしたり、仕事はオフィスではなくテレワークにするなどの工夫ができるでしょう。
また、心理的にも距離感を意識すると緊張や疲れを多少軽減できるはずです。
HSPは「意識的にすこし距離をおく」くらいを基本とすると、弱点をカバーでき、本来の長所を活かしやすくなるのではないでしょうか。
⑥刺激から自分を守る
HSPは、刺激から自分を守ることも大切です。基本的に刺激に敏感すぎる状態なので、な何もしていないはずなのに気づいたら疲れ果てていたり、不安になっていたりといった状況にも陥りやすいからです。
具体的には、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚の「5つの感覚」の刺激から自分を守る工夫をし、疲労状態を防ぎましょう。以下のような対策をとってみてはいかがでしょうか。
- 日中はサングラスをかける
- ノイズキャンセリングイヤホンや耳栓を使う
- 肌触りのよい衣服を選ぶようにする
- 味の濃いものは控える
受けとる刺激を減らしたり、心地よいものにするなどの工夫をしたりすることで、不安やストレスを和らげる手助けになるでしょう。
⑦リラックスと休養の方法を知る
HSPはストレスを感じやすいからこそ、自分にとってのリラックスや休養の方法を知っておくことが大切です。たとえば、以下のような方法が考えられます。
- マインドフルネスや瞑想を生活に取り入れる
- なにもしない日を予定として入れる
- 運動をする
- 信頼できる人に悩みを話す
人によって合う方法はさまざまです。いろいろ試しながら、あなたにとってぴったりの方法を生活に取り入れてみてくださいね。
⑧気質にあった仕事や働き方を選ぶ
HSPの方のなかには、仕事でお悩みの方も多くいるのではないでしょうか。周囲の刺激に敏感なHSPは、職場の環境や職種によっては不安が多くなったり、過剰にストレスを抱えてしまうことも少なくありません。
HSPの仕事選びでは、以下のようなことに注目してみましょう。
- 人間関係が良好かどうか
- 苦手な刺激は少ないかどうか
- 自分のペースで進められるかどうか
- 職種は得意なことであるかどうか
HSPは、周囲の環境に大きく左右されます。そのため、ギスギスしていて怒鳴り声ばかり、などの職場では刺激過多となり疲れ切ってしまうでしょう。
また、イレギュラー対応が多い職種も、深く考えて行動することが得意なHSPにはストレスとなる可能性があります。
対処しても不安が強いときは受診も検討
あなたは、いま以下のようなことに悩まされていないでしょうか。
- 自分で対処してみたものの生きづらさが改善しない
- 落ち込みや不安が強まる一方
- 社会生活・人間関係がつらく生活に支障がある
- 体の不調がでてきている
もしもこのような症状がある場合には、心療内科や精神科の受診を検討してもよいかもしれません。不安障害(不安症)やうつ病などの精神疾患にり患している可能性も否定できないからです。
受診は、以下のようなステップです。
- STEP1:HSPでの関連する症状で専門医に相談
- STEP2:医師から診断をもらう
- STEP3:診断によっては治療を行う
一般的には、まずHSPに関わる症状で「心療内科・精神科」などの専門医やカウンセラーに相談します。
その後、診断内容によっては治療が必要と判断されることもあるでしょう。治療は、お薬を使った治療やカウンセリングなど、診断内容によって多岐に渡ります。
必ず、主治医の指示に従って治療を受けるようにしてください。
まとめ
HSPの敏感な気質は生まれつきであり、変えることはできません。しかし、弱点をカバーしたり、適切な対策をすればストレスや不安の軽減は可能です。
そのためにも、HSPはまず自分の気質を客観的に理解しましょう。
気質を理解すれば、HSPに適した生活や働き方を選択しやすくなります。
不安になる要素を知っていれば事前に防止したり、そのような場面を避けることもできるでしょう。
HSPの気質はネガティブに捉えられがちですが、活かし方によってはとても大きな強みにもなります。HSPについて理解が進んだら、少しずつ気質を活かす方向に舵を切ってみることもおすすめです。
ぜひ、今回紹介した方法で刺激を和らげ、毎日の不安を少しつ軽減していきましょう。