「なんだか人間関係がうまくいかない…」
「社会にうまく馴染めていない原因は何だろう…」
何となく生きづらい現状から、社会不適合者なんじゃないだろうか、人間関係がうまくいかないのは自分がダメな人間だからなのだろうか…と、自分を責めてしまいがちなHSP。
自分のことを知りたくて、HSPについて調べる中で「愛着障害」という言葉を目にする方もいるのではないでしょうか。
愛着障害とは、幼少期の愛着形成に何らかの課題を抱えている状態のこと。HSP提唱者のエレイン・アーロン博士は「非HSPよりもHSPのほうが大人になってから不安定な愛着を形成する傾向がやや高いことがわかっている」と述べています。
今回は、愛着障害とは何なのか、そしてHSPとはどのような関係性があるのかご紹介します。
HSPは病気ではなく生まれもった気質
HSPは、敏感で繊細な気質から、発達障害やうつ病、アスペルガー症候群などの病気と似ているところがあります。そのため、「病気なのかな?」と誤解する人も少なくありません。
しかし、HSPは環境や性格などの後天的なものではなく、先天的な気質。生まれもった特性なのです。
「5人に1人が当てはまる」といわれているHSPですが、逆にいえば5人に4人、つまり約8割の人はHSPに該当しないため、少数派となるHSPの特性を理解し、共感を得るのが難しい状況なのです。
HSPの主な特徴に以下のような4つの特徴があります。
これらの頭文字をとって「DOES」と呼ばれています。
この4つの特徴が強く現れると、他の病気と似ている症状があるため「病気なのかな?」と思ってしまうのです。
「自分がHSPかどうか分からない…」
「HSPの診断をしてみたい」
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>>【徹底解説】HSPとは?特徴・診断方法・発達障害との違いなど【繊細なあなたへ】
HSPのもつ2種類の過敏性と愛着の関係性
HSPはその気質から、人間関係やコミュニケーションに悩むことが多いもの。いろいろ調べていくうちに「愛着障害」という言葉に辿り着いたという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そもそも「愛着」とは?
「愛着」とは人間が成長する過程で、周りの人との関わりを通じて形成されるものです。
幼少期に何らかの原因で養育者との愛着形成がうまくいかず、人間関係や社会性などに課題が生じるケースが「愛着障害」。医学・心理学で用いられる用語で、さまざまな定義や考え方があり、はっきり定まっていないのが現状です。
愛着障害のある子どもは、自尊心や自立心、社会性などが育たずに成長する傾向にあります。
大人になってから社会の中で、コミュニケーションがうまくとれなかったり、社会性に困難が生じているケースの原因に「愛着形成が関わっているのではないか」と考える人も少なくありません。
対人関係がうまくいかず、自己肯定感が下がり、結果として「生きづらさ」につながってしまうのです。
2種類の過敏性│神経的過敏性と心理社会的過敏性
実はHSPの特性である「敏感さ」には、大きく2種類あります。
1つは「神経学的過敏性」、もう1つは「心理社会的過敏性」。
神経学的過敏性とは、大きな音が苦手だったり、服のチクチクした肌ざわりが苦手だったりというもの。
心理社会的過敏性とは、人の顔色が気になったり、人の言葉に傷つきやすかったりというものです。
2種類の過敏性の社会適応度は同じ程度ですが、幸福度や生きづらさに関わるものは「心理社会的過敏性」の方が大きいことがわかっています。
そのため、HSPの生きづらさを減らすには「心理社会的過敏性」がポイントなのです。
心理社会的過敏性と愛着
心理社会的過敏性で大切なのが「愛着」です。
愛着は、特定の人たちとの「絆」を意味します。子どもであれば親など養育者との絆が重要な意味をもちます。子どもの頃に助けをもとめたときに適切に親に対応してもらい、守ってもらうことで、親への安心感と信頼感が育ちます。これを繰り返すことで”愛着”が育まれます。
子どもの頃は親が自分を守ってくれる「安全基地」の役割を果たしていますが、大人になるとパートナー(恋人や配偶者)が「安全基地」となります。
助けをもとめたのに助けてもらえない、かまってもらえない状況が続くと、愛着は不安定に。その愛着を取り戻そうとして、攻撃性が増したり困らせたりなどの問題行動へとつながります。これが「愛着障害」にあたります。
自分が愛されなかったときの経験から、相手に受け入れられているかを過剰に気にして、人の顔色や言葉にとても敏感になってしまうのです。
HSPと愛着障害の共通点や違い│混同されやすい障害とは?
前述したように「自己肯定感が低くて、生きづらさを抱えがち」という点がHSPの気質との共通点です。
「人の言動に反応する」
「他人に振り回される」
「ネガティブになりやすい」
「人との適切な距離感が苦手」
という点もHSPの気質と似ているのです。
親との関係性に課題がある場合に愛着障害が生じますが、HSPの場合は人の気持ちに左右されやすく共感しやすい気質の影響から、より愛着障害を生じやすいといわれています。
HSPと愛着障害の異なる点
HSPと愛着障害は共通点が多いですが、違いもあります。
感覚が敏感でスピリチュアルに理解がある
HSPは音や匂いなど五感が鋭いですが、愛着障害はそうではありません。また、HSPはスピリチュアルな感覚について受け入れることができたり、受け入れられない場合でも、強い否定感情はもちません。
共感力の有無
HSPは共感力がとても高いため、相手の感情の波を受け止めやすいのです。愛着障害にはこの特徴は含まれていません。
自責と他責
HSPは自尊心が低い人が多く、何か起こったときに自分のせいではないのに「自分のせいかも…」と自責の念が強い傾向にあります。愛着障害の場合、自尊心は高く、自分にとって不都合なことが起きたときは、自分ではなく「周りが悪い」と他責する傾向にあります。
HSPと混同されやすい障害
前述のようにHSPと愛着障害は似ている部分もあり同じように思われることもありますが、他にも混同されやすい障害がいくつかあります。
発達障害
発達障害には、自閉症スペクトラム障害・ADHDなどがあります。
自閉症スペクトラム障害には、感覚過敏の症状があり、刺激によってパニックを起こすことがあります。また、強いこだわりを見せることがあり、それがHSPの「深く物事を考える」特性と似ているのです。
発達障害は、過敏性以外にもコミュニケーションの問題や社会性、集中力の課題があり、この点において適切な対処法やカウンセリングが必要になります。刺激を避けるだけでは解決しないこともあり、特別な訓練や療育が必要です。
不安障害
過度な不安とそれによる不適切な行動を起こしてしまうのが、不安障害です。不安が強く、些細なできごとにも敏感に反応します。敏感さや不安を感じやすいという点がHSPの特性と似ています。
不安障害は病気なので、薬物療法や非合理的な認知の修正などの治療を要します。カウンセリングでは、認知行動療法などを用いた治療が必要な病気なので、HSPだと判断してしまうと適切な治療が受けられなくなるので注意が必要です。
パーソナリティ障害
パーソナリティ障害には、境界性・自己愛性・演技性などいくつかの分類があります。パーソナリティや対人関係がうまくいかないことで課題が生じます。
パーソナリティ障害にも過敏性があり、他者との関係性において症状が顕著です。被害的感情が高まることで、他者を巻き込んでしまうことも。
パーソナリティ障害では、他者との関係性に焦点を当て、どのような距離感を保つのか、人とどのようにコミュニケーションをとっていくのか、ということを中心に取り組むことが多いです。
生きづらさを和らげる5つの方法
これまで、HSPと愛着障害の関係性や違いなどをご紹介してきましたが、共通しているのは「生きづらさ」です。
「自分らしく心地よい暮らしをしたい!」
そのためにできることを5つご紹介します。
①愛着や安全基地の見直し
前述したように、心理社会的過敏性による生きづらさを和らげるには、自分の「安全基地」を見直すことが効果的です。
愛着は一方的なものではありません。自分が相手を大切に想うように、相手も大切に想ってくれるからこそ、愛着関係が成立します。
相手との関係性が上手くいっていないと感じている場合には、自分の態度や考え方を少し変えてみると、相手との関係性がいい方向へ変わることも。
疲れたとき、苦しいとき、つらいときに逃げ込める「安全基地」の存在は、とても大切なのです。
②自分の特性を理解する
HSPにはどんな特性があり、どんな行動の傾向があって、弱みや強みは一体何なのか。
HSPといっても個々にその特性は異なります。同じように敏感な気質をもっていても、光に反応するのか、音に反応するのか、匂いに反応するのか。
自分がどんなときに疲れやすく、つらいと感じるのか。
逆に、エネルギーが満ちて自分のパフォーマンスを発揮できるのはどんなときなのか。
自分の取扱説明書を作っておくとよいでしょう。
③良質な睡眠をとる
敏感な気質をもっているので、睡眠に課題を抱える人も少なくありません。少しの物音で起きてしまったり、隣に人が寝ていると気になって眠れなかったり。
しかし、HSPだからこそ良質な睡眠はとても大切です。
心身共に疲れを回復させることができるのは睡眠だけ。どうしても眠れないときは、横になって目を閉じているだけでも効果があります。周囲からの刺激を遮断する時間は、睡眠と同じような状態を作ります。
睡眠によって疲れが回復すると、心にも余裕ができるでしょう。
④人と適度な距離を保つ
HSPは人の言動に影響されやすい特徴をもっています。人の顔色を無意識のうちにうかがっているところもあり、知らず知らずのうちに疲弊しています。
「人は人、自分は自分」と相手との距離を保つようにしましょう。
少し冷たいのでは?と自分を責めることもあるかもしれません。
しかし、自分の人生を大切にできてこそ、人にも優しくできるもの。まずは、自分の心を守り、向きあい、自分が何をしたいのか心の声を聞いてみましょう。
⑤ポジティブ日記をつける
HSPは自分を責めてしまい、自己肯定感が低い傾向にあります。それは、自分のダメなところにばかり意識が向いている証拠。
そこでおすすめしたいのが日記です。
毎日続けるなんて面倒だなと思うかもしれません。しかし、たった3行なら苦にならないのではないでしょうか。
「今日あったよかったこと」
「嬉しかったこと」
「感謝したいこと」
これを3つだけ記すのです。できれば、なぜよかったのか(上手くいったのか)も書くと更に効果的とのこと。
これは、アメリカで生まれた「Three good things」というメソッド。ポジティブ心理学の研究で知られるマーティン・セリグマン教授は「寝る前に良かったことを3つ書き出し、それを1週間継続すると、その後半年間にわたり幸福度が向上。抑うつ度が低下する」との研究結果を発表しました。
書き出すことは、大きな出来事でなくてもいいそうです。例えば、今日のランチのサラダが美味しかった、田中さんと話ができた、陽ざしが心地よかったなど日常の小さなできごとでよいのです。
書けたらそれを読み上げ、その出来事を思い出しながら、幸せな気持ちのまま眠ります。眠っている間も脳がポジティブで幸せな状態を維持できるのです。
ポジティブ日記を続けることで、ものごとのいい面に着目するクセがつき、自分の短所より長所に目が向くように。
まとめ:HSPも愛着障害も「ありのままの自分を受け入れること」から
HSPと愛着障害は似ている点がありましたが「共感性」や「自責の念」など大きく異なる特徴も見られました。
どちらもまずは「自分の特性を知り、ありのまま受け入れる」ことが大切です。
無理に頑張りすぎたり理想を追い求める前に、まずは今の自分を受け止めて向きあってみる。
そして、本当につらいとき、悩んでいるときは無理をせず、精神科や心療内科、カウンセリングなど医療機関に相談することも検討してみましょう。